流石奇屋~書評の間 -4ページ目

「筒井康隆コレクション 秒読」 筒井康隆 2009-032

筒井康隆氏「筒井康隆コレクション 秒読」読了しました。 

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秒読み―筒井康隆コレクション (ボクラノエスエフ 2)/筒井 康隆
¥1,785
Amazon.co.jp
出版元
福音館書店
初版刊行年月
2009/02
著者/編者
筒井康隆
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:3点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:5点

あらすじ
核ミサイル発射のカウントダウンが、今まさに始まろうとするその瞬間、男の意識は、40年の時を遡る。表題作「秒読み」ほか、筒井康隆の精髄14作品を収めた傑作集。<<福音館書店HPより抜粋>>



14作品の1ページ弱の超短編から中編くらいが所収されています。
「ボクラノエスエフ」シリーズということで、もちろんSFばかりなのですが、多種多様の物語です。

星新一監修の「ショートショートの広場」ってのが子供の頃好きだったのですけど、それに近い感覚です。

個人的には追われる恐怖を描く「走る取的」が好みでした。
淡々と怖いってところがミソなのです。

さて、本編に加えて良かったのは巻末の長嶋有氏の解説。
「小説は役立っているのか」というテーマで書かれていますが、この解説は秀逸でした。

”たくさん感じさせてくれる本は、間違いなく自分の役に立つ。
「役立った」ということが、目に見えないだけだ。”


その通りだと思います。
この文章に出会えただけでも、読んでよかったと思いました。

「カラット探偵事務所の事件簿①」 乾くるみ 2009-031

乾くるみ氏「カラット探偵事務所の事件簿①」読了しました。

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カラット探偵事務所の事件簿 1/乾 くるみ
¥1,575
Amazon.co.jp
出版元
PHP研究所
初版刊行年月
2008/09
著者/編者
乾くるみ
総評
20点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:4点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
あなたの頭を悩ます謎を、カラッと解決いたします!高校の同級生・古谷(ふるや)が探偵事務所を開くことになった。体調を崩していた俺は、その誘いを受け新聞記者から転職して、古谷の探偵事務所に勤めることにした。探偵事務所といっても、浮気調査や信用調査などは苦手としているようだ。出不精の所長・古谷を除けば、実質的な調査員は俺だけになってしまうので、張り込みや尾行などといった業務もろくにこなせないのだ。ではいったい何ができるのかというと――実は≪謎解き≫なのだ。作家とファンのメールのやりとりの中から、隠された真実を明らかにしていく「卵消失事件」、屋敷に打ち込まれた矢の謎を解く「三本の矢」など、技巧の限りを尽くして描いた6つの事件を収録。『イニシエーション・ラブ』『リピート』で大反響を巻き起こし、練達の愛好家を唸らせつづける著者、待望の連作短篇集。 <<Amazonより抜粋>>


あの「イニシエーションラブ」の乾氏ですから、何か最後にオチがあるんだろうなと思いつつ読み始めました。

話そのものは、ワトソン役の井上が、探偵事務所で対応した事件を短編と言う形で書いています。
時系列に書かれているため、短編どおしのリンクがあったりして、それなりの工夫が見られます。

といいつつも、短編なだけに物語りそのものには厚みはなく、謎解きをメインとしているせいか、ちょっと強引な感じの謎解きだったりするわけです。

この辺りの織り交ぜ方は、流石と思いつつも、個人的には「お腹いっぱい」な感じも受けました。

ちょうど、歳をとると「脂っこい」のが食べれなくなるのと同じ感じです。(全然、同じではありませんが)

ということで、大ラスのオチに期待がかかるのですが、正直、直前に感じていたことの通りだったこともあり、そんなに驚きませんでした。
消去法で考えると、見つかってしまう感じ。

やっぱりイニシエーションラブの衝撃には敵わなかったわけですね。

2009/4/11に借りた本

もうすっかり暖かくなってまいりました。
桜も散り始めています。今週末が最後かもしれませんね。

ということで、予約本1冊を含む、6冊の借り出しです。

題名
カラット探偵事務所の事件簿①
読了可能性
★★★★☆
出版元
PHP研究所
初版刊行年月
2008/09
著者/編者
乾くるみ
読前感想
予約本です。当ブログの検索ワードの上位に常にある「イニシエーションラブ」の乾氏です。①とあるので②があるのでしょうね。
読後感想リンク


題名
水銀奇譚
読了可能性
★★★★☆
出版元
理論社
初版刊行年月
2007/08
著者/編者
牧野修
読前感想
新刊本コーナーにありました。もしかしたら以前借りているかも、もっともしかしたら読んでいるかもとか思いながらの借り出しです。
読後感想リンク


題名
筒井康隆コレクション 秒読
読了可能性
★★★★☆
出版元
福音館書店
初版刊行年月
2009/02
著者/編者
筒井康隆
読前感想
こちらも新刊本コーナー。筒井康隆氏ってあまり読んでいないのですね。で、短篇集だしコレクションってくらいなので借りてみました。ちょっと期待しています。
読後感想リンク


題名
6ステイン
読了可能性
★★★☆☆
出版元
講談社文庫
初版刊行年月
2004/11
著者/編者
福井晴敏
読前感想
ちょっと今週から移動が多そうなので、文庫本です。以前に借りました。意外に福井氏は読み始めれば、面白くなります。
読後感想リンク


題名
宇宙戦争
読了可能性
★★★☆☆
出版元
東京創元社SF文庫
初版刊行年月
1898
著者/編者
H・G・ウェルズ 中村融 訳
読前感想
昨日テレビでやっていたのを見て、結末がいまいちだったので原本読んでみたくなりました。それにしても1898年ってすごいですね。
読後感想リンク


題名
Truth In History 徳川一族 時代を創った華麗なる血族
読了可能性
★★☆☆☆
出版元
新紀元社
初版刊行年月
2009/01
著者/編者
清水昇/川口泰生
読前感想
パラパラ本です。
読後感想リンク


「クワイエットルームにようこそ」 松尾スズキ 2009-030

松尾スズキ氏「クワイエットルームにようこそ」読了しました。

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クワイエットルームにようこそ/松尾 スズキ
¥1,100
Amazon.co.jp
出版元
文藝春秋
初版刊行年月
2005/12
著者/編者
松尾スズキ
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:2点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:5点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
恋人との別れ話から、薬を過剰摂取してしまった明日香は、意識を失っているうちに精神病院の閉鎖病棟に強制入院させられてしまう。わたしは「正常」なの、それとも「異常」なの? 逃げ場のない閉鎖空間を舞台に、くりひろげられる葛藤の世界。冒頭の衝撃的なシーンに始まり、不運に不運を重ねていく明日香果たして絶望の淵に落ちてゆくのか。それとも……。<<Amazonより抜粋>>


まず、タイトルが良いですね。
格好良いです。

ストーリはあらすじのとおりですが、そんな内容を面白おかしく(すこしだけ悲しく)描いています。

主人公本人の目線で物語が語られるので、この「語り部」自身の精神状態は至ってまともに見える。
であるにも関わらず、この主人公はれっきとした精神病院の患者なわけです。

このあたりの構造ってのが、読み手をある意味において「不安」にさせてくれるので、大変新鮮でした。

精神病院の患者面々のそれぞれの事情ってのもそれほど深く追求するような形になく、主人公を際立たせる「風景」のような扱いなのですが、やっぱりこの「風景たる登場人物」のキャラクターそのものは突飛なわけですね。

現代版の「不思議の国のアリス(ただしのその国はアリスの心の中にあったりする)」見たいな感じです。

ラストの収束へ向かうところなどは、ちゃんと物語になっており、ある意味で、しっかり退院できたことが救いでした。

映画化 されているようで、びっくりしました。
HP見る限り、ちょっと内容は違うようですが。

「プリンセス・トヨトミ」 万城目学 2009-029

読前感想なき読後感想です。
万城目学氏、最新作「プリンセス・トヨトミ」読了しました。 

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プリンセス・トヨトミ/万城目 学
¥1,650
Amazon.co.jp
出版元
文藝春秋
初版刊行年月
2009/02
著者/編者
万城目 学
総評
24点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:4点 
装丁:4点

あらすじ
このことは誰も知らない。五月末日の木曜日、午後四時のことである。大阪が全停止した。長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、東京から来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった―。前代未聞、驚天動地のエンターテインメント、始動。<<Amazonより抜粋>>


あらすじにもありますが、まさしく「エンターテイメント小説」。
素直に「楽しめる小説」です。

もともと万城目氏の作品は映像化しやすいと思っていましたが、こちらも非常に映像化しやすい。
ドラマ化であろうと映画化であろうと、評判次第では必ず映像化されるでしょう。

「大阪」という場自体の「面白さ」も手伝って、ストーリーは簡潔明瞭。
それでいて、深い歴史そのものとリンクしていて、歴史小説をお読みの方にも面白いのではと思いました。

このようなストーリの分かりやすさに加えて、キャラクター設定も非常に丁寧。
例えば、三人の調査員はそれぞれまったくかぶることなく、それぞれの持ち味を十分に出している印象です。

ラストまでの盛り上がりで、一つ見えてくるのは「家族」特に「父親と息子の関係性」なのですが、そういった隠しテーマも、きっちりと収束させるあたりは、氏のテクニックなのだと思います。

非常に楽しく読ませてもらいました。

「残される者たちへ」 小路幸也 2009-028

小路幸也氏「残される者たちへ」読了しました。

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残される者たちへ/小路 幸也
¥1,575
Amazon.co.jp
出版元
小学館
初版刊行年月
2008/12
著者/編者
小路幸也
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:4点

あらすじ
この世界は、まだこうして美しいままにある。デザイン事務所を経営する川方準一のもとに、同窓会の通知が届く。準一の通った小学校の子供たちは、ほぼ全員が〈方葉野団地〉の子供だった。準一は、親友だったという押田明人に会場で声をかけられるが、彼のことを何も思い出せない。他の人間はすべて覚えているのに。悩む準一は、団地の幼なじみで精神科医の藤間美香に相談する。美香は、〈方葉野団地〉に住む中学生、芳野みつきの診療も行っていた。みつきは、自分を庇って死んだ母親の記憶を見るようになったという。記憶のずれと団地の存在に関係があると見た準一と美香は、団地の探索に乗り出した。二人は〈方葉野団地〉で、想像もしなかった“のこされるもの”に遭遇する…。<<Amazonより抜粋>>


高度成長期に建てられた「団地」。
その「団地」の今にクローズアップし、そこから出てゆく者と残された者の物語が展開されていきます。

主要登場人物視点の三人称が切り替わります。
相変わらずのジュブナイル系も挟み込まれております。
切り替わりのテンポが良いので、読み始めればぐいぐいと行くのですが、一方で、ファンタジーな要素も入り込んでいるため、世界観を知るにはちょっと時間がかかるかも知れません。

読み続けて、ふと思ったのですが、こういう団地(集合団地)って、いろんなところにあったな~と。
やっぱり真ん中に公園があって、その公園で遊んだ記憶もあるけれど、なんだか「よそ者」扱いされていた気がするな~と思いました。

私自身は子供の頃、小さな一戸建てに住み、学校からも近い場所にあったので「遊び場」といえば校庭だったりしたのですけど、たまにこういった団地の公園にも足を運んだ記憶があります。

そういう団地の世界に住む人々が、憂う世界というものをひしひしと感じました。

読み終わって、タイトルを読み返すと、タイトル自体が、もう一つ別の意味を持つことに気がつかされます。

3月のアーカイヴを3月31日23時59分で、今リリースしました。


3月のアーカイヴを3月31日23時59分で、今リリースしました。足あと

ということで、下記URLでございますです。

http://ameblo.jp/sasugakiya-hit/entry-10234821927.html

「太陽の坐る場所」 辻村深月 2009-027

辻村深月氏「太陽の坐る場所」読了しました。
この氏の本に共通した読了感を「辻村感」と命名しました。 

amazonリンク
太陽の坐る場所/辻村 深月
¥1,500
Amazon.co.jp
出版元
文藝春秋
初版刊行年月
2008/12
著者/編者
辻村深月
総評
23点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:5点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
高校卒業から10年。クラス会に集まった男女の話題は、女優になったクラスメートの「キョウコ」。彼女を次のクラス会へ呼び出そうともくろむが、「キョウコ」と向かい合うことで思い出される、高校時代の「幼く、罪深かった」出来事―。よみがえる「教室の悪意」。28歳、大人になってしまった男女の想いを描き、深い共感を呼び起こす傑作ミステリー。<<Amazonより抜粋>>



あらすじの通りの内容です。
同じ高校の同級生だった男女の視点で、女優となったキョウコを通じて物語が展開していきます。


興味深かったのは2点。

1点は、28歳となった彼らの幼さとその変化。
F県と東京という場所に対する差別もあり、女優キョウコに対するミーハー感覚や、一方で嫉妬などもあり、所詮「大人になりきれない子供達」ばかりなのです。
そして、それらが、人としての本質の部分だったりするから、恐ろしかったりするのですね。

そんな彼らが高校時代を振り返りつつ、同窓会に来ない「キョウコ」に接触してくことで、物語は進行していきます。
あるものは一歩進むことを選び、あるものはそこに留まることを選びます。

彼らが、キョウコに対して「囚われている」と表現しているのですが、実は「囚われている」のは彼ら自身であるというとても皮肉だけど、ある意味で胸のすく展開になるわけです。

また、そこに彼らに見え隠れするのは、「罪」とはいえないくらいの、「悪意」。
氏の描く物語の登場人物には、この「悪意」がしっかりあります。
読み手は、自分にもあるであろうこの「悪意」を感じながら、客観的にこの本を読むのでしょうね。
そういう私自身も、そんな感じで読みました。

もう1つは、ネタバレに近いですが、読者へのミスリーディングが隠されています。
薄々感じますが、それなりに手の込んだ「ミスリーディング」を味わうことができます。
そういう技巧がないものと思って読み進めると、びっくりします。

こちらもなんだかお得感がございました。




2009年3月の読後感想アーカイブ

◆今月のアクセスランキング

※今月から表示要領が変わりました。
※来月どんな形にするか考えます。

[総合ランキング]
デイリー : 17030位
月間 : 19344位
[ジャンルランキング]
アラフォー : 127位
本・読書 : 58位


◆検索ワードTOP10

1 書評 5.9%
2 あらすじ 4.8%
3 感想 3.6%
4 乾くるみ 3.3%
5 さくら 2.9%
6 西加奈子 2.7%
7 伊坂幸太郎 2.5%
8 ネタバレ 2%
9 砂漠 1.8%
10 荻原浩 1.6%



◆2009年3月のランキング

2月に引き続き、読了数は少ないです。
上下巻をバラバラにカウントしても8冊。
2月は日数が少なかったので、実質、もっと読めていないということですね。

しばらくはこのペースなんじゃないかと思ったりします。
いろいろありまして。

ということで、3月の第1位は、「数学的にありえない」の上下巻。
多分、初の「海外小説」かもしれませんね。


第1位;「数学的にありえない」 アダム・ファウアー 矢口誠訳
(上) ;エンターテイメント小説;2009年03月30日(月) 21時19分06秒
(下)  ;エンターテイメント小説;2009年03月31日(火) 21時36分10秒

数学的にありえない〈上〉/アダム ファウアー

¥2,200
Amazon.co.jp


数学的にありえない〈下〉/アダム ファウアー

¥2,200
Amazon.co.jp


第3位;「ユージニア」 恩田陸
;エンターテイメント小説;2009年03月01日(日) 16時13分31秒

ユージニア/恩田 陸

¥1,785
Amazon.co.jp


第4位;「カラスの親指」 道尾秀介
;エンターテイメント小説;2009年03月20日(金) 15時32分40秒

第5位;「忍びの国」 和田竜
;エンターテイメント小説;2009年03月03日(火) 23時53分17秒

第6位;「冠・婚・葬・祭」 中島京子
;エンターテイメント小説;2009年03月08日(日) 17時43分48秒

第7位;「真庭語」 西尾維新
;エンターテイメント小説;2009年03月28日(土) 12時49分59秒

第8位;「ぼくは落ち着きがない」 長嶋有
;エンターテイメント小説;2009年03月25日(水) 21時22分44秒

「数学的にありえない(下)」 アダム・ファウアー 矢口誠訳 2009-026

アダム・ファウアー「数学的にありえない(下)」読了しました。
上下巻、あわせて読後感想します。

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数学的にありえない〈下〉/アダム ファウアー
¥2,200
Amazon.co.jp
出版元
文藝春秋
初版刊行年月
2006/08
著者/編者
アダム・ファウアー 矢口誠訳
総評
24点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:5点 
キャラ立ち:4点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
巨大な陰謀に巻き込まれた天才数学者ケイン。窮地に追い込まれた彼の唯一最大の武器、それは「確率的に絶対不可能な出来事」を実現させる能力だった----。北朝鮮に追われるスパイ、謎の人体実験を続ける科学者、宝籤を当てた男、難病の娘を持つ傭兵......随所に仕掛けられた伏線が次々に起爆、全ての物語は驚愕の真相へと収束する----。 <<Amazonより抜粋>>


良かったですね。

ハリウッド映画のようなスリリングな展開。
伏線に伏線を重ねていく手法。
拡大しつづける物語自体のダイナミックさ。
そして、収束の仕方。

ここまで「うたい文句」を並べても、それほど違和感ないのですね。

日本の小説にみられる「ワビサビ」のようなものはないのですけど、ストーリー自体の構成上、それはそれで良いわけです


全般的に主要な登場人物視点が切り替わりながら、三人称で物語が進みます。
だから、最初のうちはちょっとついていけなかったりしますが、読み進めていくと、それほど視点が変わらないことからか、それぞれのキャラクター(および役割)がはっきりしているからか、そんなに抵抗がなくなります。

ということで、個人的に外人の名前って覚えづらいのですが、こちらは問題なかったです。


また、物語の間に挟まれる数学のエピソードや、物語の鍵の握る主人公ケインの得た能力のSF的説明は、数学を苦手としている読者にも、それなりに理解できる筋書きでした。

上巻は、物語が拡大し、下巻で収束するというバランスもありでした。
氏の別作品が読みたいと思いました(まだ出ていないようではありますが)